DSC_0393

日本人の洗顔好き。よく話題になりますね。
近所のドラッグストアを覗いて見ると、
洗顔コーナーには本当にたくさんの種類の
洗顔料が並んでいます。全部を一度に
解説すると、文章のボリュームが大きく
なり過ぎるので、今回は「石鹸」の選び方
についてお話しします。


そもそも、石鹸という漢字は
「固い灰汁(アク)の塊り」と言う意味だ
そうです。
大昔の人々が、たき火を囲って動物の肉を
焼き、脂(アブラ)が垂れ、翌朝のたき火跡の
燃えカスの中に、何やら灰の塊りがある。
それに水を加えたら、泡が立って、汚い手の
よごれがきれいに取れた。
というのが良く言われる「はじめ石鹸物語」
です。
img002

石鹸は、動物のアブラ(脂肪酸)とたき火
跡の灰(アルカリ)が偶然出会い
化学
反応を起こして生まれた
、自然の産物
だったのですね。
ひょっとしたら、このような発見を祈祷師
のような人が利用して、民心をつかむ
材料にしていたのかもしれません。
こんなところから、現代でも、根強い
石鹸信仰みたいなものが続いている
ような気がします。

ところで、毎日、湯飲みでお茶を飲む人は、
湯飲みや急須に茶渋が付着するのを
目にすることがあると思います。あれは、
お茶の渋味成分と水に含まれるカルシウム
などの金属イオンが結びついて器の表面
に蓄積していったものです。
実は、石鹸でも「石鹸渋」ならぬ石鹸カス
皮膚に付着していることをご存知でしたか。
この石鹸カスのことを、金属石鹸、あるいは
「スカム」とも言います。あまり響きは良くない
ですよね。
「スカンク?」なんて!
スカムは被膜状の物質で、石鹸に含まれる
脂肪酸と水道水のカルシウムやマグネ
シウムなどの金属イオンが結合したものです。
水をはじく性質があり、あの、石鹸で洗った
後の被膜感をもたらす物ですね。

この石鹸独特の被膜のおかげで、洗顔後も
皮膚が保護されて、乾燥肌が良くなった、
アトピー性皮膚炎が直った、などの改善例
が次々と話題になり、石鹸は自然で優しく、
美肌効果もある、というイメージ
が生まれた
のだと思います。
ベビー石鹸も昔から固形の石鹸ですよね。
ただし、ヘアケアの分野では、髪の毛が
ギシギシになり、櫛通りも悪くなることから、
まだまだ支持する人は多くないようです。

ところで、石鹸は本来、洗浄力がかなり強い
洗浄剤に区分されます。また、
酸性・アルカリ性の分類ではpH9.0前後の
弱アルカリ性になります。皮膚は通常、
弱酸性ですから、石鹸で洗顔をすると、
皮膚は弱アルカリ性に傾きます。
元の弱酸性に戻るのに数時間かかると
言われています。汗に含まれる乳酸や
アミノ酸、皮脂に含まれる脂肪酸などが
弱酸性側に戻します。


img004

そこで、こんな実験をやってみました。
フラスコに石鹸水を一日2回取り替えて
入れて、1週間。一方のフラスコには、
アミノ酸系の洗浄剤(石鹸ではありません)
をやはり一日2回取り替えて1週間、連続で
観察してみました。
実験前2
左:アミノ酸系洗浄剤(フォーム)と、右:石鹸水

すると、アミノ酸系洗浄剤ではフラスコの
内側に何ら、変化は見られませんが、
石鹸水の方では、フラスコの内側に、
薄く、白いモヤモヤのような膜が見え
ました。
フラスコ底1
アミノ酸系洗浄剤を入れていたフラスコ

フラスコ底2
石鹸水を入れていたフラスコ

お風呂で使う洗面器でも、内側に垢が
いっぱい付着してきますよね。もちろん、
皮膚から剥がれ落ちた垢やその他の
汚れも含まれますが、これが、石鹸独特
の膜状物質、金属石鹸「スカム」なのです。

それでは、本題の石鹸の選び方ですが、
石鹸には、大きく分けて機械練りと枠練
りのものがあります。
機械練りは脂肪酸と水酸化ナトリウムを
熱して反応させ、急速に冷却し、機械で
練って丸や四角の形に押し出し、カットし
て乾燥させて出来上がり、というように、
効率良く大量生産で製造する石鹸です。
この種類の石鹸は脂性肌の人の洗顔や
ボディー用に適しています。

枠練りは熱して反応させるところまでは
同じですが、その後、型の枠に流し込み
今度はゆっくり冷まして、さらに何ヵ月も
熟成させる、非常に多くの手間をかけて
つくる石鹸です。保湿成分もたっぷり
入れることができるので、洗顔後の
うるおい効果が高いのも特長です。
特に、白糖(砂糖)とグリセリン、エタノール
を入れて反応させると、透明な石鹸が
できます。

勇気のある人は、透明石鹸を舐めて
みてください。甘いですよ!
この種類の石鹸は乾燥肌、敏感肌の人
の洗顔におすすめします。


DSC_0394
機械練り石鹸(洗浄成分:石けん素地)

DSC_0395
枠練り透明石鹸(洗浄成分:脂肪酸石けん)

もう一つ、一般の人には石鹸に見えないかも
しれませんが、こちらのチューブに入った
ペースト状の洗顔フォームも基本的には石鹸の
仲間です。
DSC_0392

石けん素地とも脂肪酸石けんとも書いて
ありませんが、ステアリン酸、ミリスチン酸、
ラウリン酸の脂肪酸
水酸化K(カリウム)
と書いてありますから、これらが反応して、
カリ石鹸素地になり洗浄力を発揮します。
同時にラウレス-6カルボン酸という洗浄
成分を加えることで、洗浄力が更にアップ
し、泡立ちも良くなります。
洗顔後のさっぱり感は固形石鹸以上です。
メーカーさんは「しっとりモイスチャー」と
うたっていますが、私個人の意見としては、
脂性肌、10代の若い人向きだと思います。

冒頭の写真にある茶色の石鹸は有名な
アレッポの石鹸です。私はこの石鹸で
からだを洗っています。こちらは伝統的な
釜炊き、枠練りの石鹸です。オリーブ
オイルとローレルのオイルを釜に入れ
水酸化ナトリウムを加えて熱します。
ゆっくり炊き込んで反応させます。
反応が終わったら、枠に流し込み、
冷ましてカット。その後、1年ぐらい乾燥、
熟成させて作ります。
ありのままの原始的な石鹸の雰囲気
がいいですよね。しかも、保湿効果も
高いので、冬は乾燥によるかゆみを
予防してくれます。

最後に今日紹介した石鹸の仲間は、
石鹸それ自体は結構洗浄力の強い
弱アルカリ性の洗顔料です。どうしても、
洗顔後ツッパル、乾燥するという人は、
洗浄力は弱いですが、うるおいは残る、
弱酸性のアミノ酸系洗浄剤(ヤシ油
脂肪酸アシルグルタミン酸Kなど)

を配合した洗顔料をおすすめします。

洗顔は保険と一緒に見直しを!